Category: 不使用取消審判

インドネシアでIKEAが商標権を失ったようです

ちょっと忙しくてこの投稿を3週間も下書きに入れたままにしてしまいました。IKEAがインドネシアで商標登録を失ってしまったというニュースです。

IKEAといえば言わずと知れた家具メーカーですが、どうやらインドネシアで『IKEA』の商標権を取り消されてしまい、その結果他者が同商標を登録する事態となってしまったようです。

上記記事によると、IKEAは2010年に『IKEA』商標をインドネシアで登録したが、2014年までその商標を使用していなかったようです。その結果、不使用取消審判を請求されてしまい、商標登録を取り消されてしまいました。そして、2013年に同商標を別途出願していた現地企業の登録が認められてしまったということです。

これが正しいとすると、IKEAはインドネシアでの商標権を失ったばかりではなく、今後は店名変更などをしないと他人の商標権を侵害してしまう可能性もあります(ただしインドネシアではいわゆる先使用権は商標については存在しないようなのですが、侵害訴訟において先使用を主張し得るというよくわからない制度のようで、現実にどうなるかは不明です)。

インドネシアでも取り消しの対象となる不使用期間は3年間なので、素直に考えれば仕方ないのかなというところです。ただインドネシア商標法の規定では、不使用の場合にはその商標登録を「取り消すことができる」という任意規定なっており、取り消すかどうかは商標局の職権判断となっているようです。まあここに裁量が入るのはあまり好ましくありませんし、国際的調和の観点からも不使用期間が継続して3年間あれば形式的に取り消されるべきでしょうから、実際に形式的に取り消す運用がなされているものと思われます。

ということでインドネシアでは『IKEA』商標は地元企業の手にわたってしまい、実際に商標権侵害を根拠にIKEAに対して名称変更を迫っているようですから、IKEAにとっては大問題です。どうやら新しく商標権者となった Ratania Khatulistiwa 社は、もともとIKEAの商標権を横取りする意思で出願をして、かつ不使用取消審判を請求したようです。自らが権利者となったらIKEAに対して巨額のライセンス料を請求するつもりなのでしょう。

さて、仮に同様の問題が日本で起きたらどうなるでしょうか。やはりIKEA側が不使用であったならば、取り消しは免れないでしょう。日本の商標法では、不使用の場合は強制的に取り消しとなり、単に商標権者に損害を与えるなど不正の目的の場合など特殊なケースを除いては、審判官の「取り消さない」という職権判断が入る余地はありません。

ただし、他人が『IKEA』商標を勝手に登録することは、おそらくできません(商4条1項19号、15号、10号、7号など)から、IKEAはまた自分で出願して取り直せば済みます。そういう意味であまり大きな問題にはならないと思われます。

ただ、これはIKEAが世界的に有名な企業だからいえる話であって、そうでない場合は事情が異なります。数年前に商4条1項13号が廃止されたため、不使用取消審判により商標登録が取り消されると、他人が同じ商標をすぐに登録できるようになりました。以前は1年間は他人は登録できなかったので、取り消されても1年以内に出願し直せば優先的に再登録できましたが、いまはそんなことはないので、先に他人に出願されてしまうと商標登録を事実上横取りされる形になってしまいます。

やはり登録した商標はちゃんと使用しないといけないということでしょう。

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