iPhone6が北京で販売差止となったそうです

なんと中国・北京で、iPhone6と6Plusが、中国企業の有する意匠権を侵害するとして、差し止められたというニュースが流れてきました。

ネットでも話題になり、中国に対する否定的なコメントが目立ちましたが、個人的には、意匠登録があったのならばたまたまそれに似てしまった可能性はあるだろうし、意外とまともなニュースかもしれないという気がしていました。

ところが、いつまで経っても、結局どの意匠権を侵害するかのニュースは流れてきません。Gizmodoによる最新の記事でも、

となぜか実際に販売されている商品とiPhoneの外観を比較されており、何が言いたいのかよくわかりません。意匠権侵害は登録意匠との類否を見なければならないので、実際に販売されている商品の外観は関係ないからです。なお、中国では外観模倣(日本でいう不競法2条1項3号の類型)が不正競争防止法で禁止されないので、この観点からも、販売されている商品の外観との比較は無意味です。

仕方ないので中国のサイトを漁ってみると、どうやら以下の意匠権らしいことが判明しました。

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本件意匠出願は2014年1月13日になされており、これはiPhone6の発売日よりも前なので、仮に中国裁判所*のいうとおり両意匠が類似するとしても、少なくともiPhone6の存在が本件意匠登録を脅かすことはないでしょう。

* 本件はそもそも裁判(司法ルート)での差し止めなのか、行政ルートでのものなのか、わからないのですが・・・。

では両意匠は類似するのでしょうか。正面図だけだとよくわからないので、六面図すべてを並べてみます。

正面図

背面図

左側面図

右側面図

平面図(上面図)

底面図

一方で、iPhoneの外観はどうでしょうか。

正面図

背面図

どうでしょうか。全体的なフォルムは似ていると言えなくもありません。特に角が丸みを帯びている点や、背面が平面(平板)でエッジ付近で急なカーブを描いている点などは、よく似ています。

これらの点について、両デザインを並べて比較してみました。

角のカーブの比較
こうして並べてみると、iPhoneの方がよりカーブが大きいことがわかります。

側面のカーブの比較
よい素材が見つからなかったのと、画像編集技術が拙いせいで、側面のカーブはうまく比較できません。もしかしたら同じような角度なのかもしれません。

一方で、より細部を見ると、様々な点で異なることがわかります。正面図においては、iPhoneにはホームボタンがありますし、インカメラの配置も異なります。背面図においては両者の差異はより顕著です。

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並べるとよくわかりますが、

  • iPhoneには上下端付近にそれぞれ横線が入っており、背面全体を3つのパートに分けているような印象をあたえる点
  • カメラの位置はほぼ同じであるが、そのサイズや色が微妙に異なる点
  • LEDライトの位置が異なる点
  • iPhoneにはアップルのロゴが入っている点
  • ブランドロゴが異なり、その付記的記載の有無も異なる点
  • スピーカー部分の有無が異なる点
  • iPhoneの方は側面のボタンがややはみ出して見える点

など、一見して判別できる差異が複数あります。側面のボタンやSIMトレイの配置が異なることも考慮すると、全体として両意匠の外観が観者に与える印象は大きく異なるように思われます。

両者はともに「スマホ」という同一の商品ですから、基本的な形状が類似するのは仕方ないです。そのような類似点は、意匠の類否判断においては考慮されません。スマホのデザイン(特に登録意匠)はたくさんあり、どれも似たり寄ったりなので、それらに共通する部分は類否判断から除かれます。このように似たようなデザインがたくさんある分野では、意匠の類似範囲は狭くなり、ちょっとした差異でも、そこが特徴部であれば、意匠非類似となることが少なくありません。

そう考えると、結局両意匠で類似するのは全体のフォルムくらいです。iPhoneにはその他の特徴的なデザインが複数加えられていることを考えると、これらを類似とするのはちょっと無理があるように思います。もしこれを類似というなら、まず小米(シャオミ)をなんとかしろと言いたくなります。

Gizmodoの記事を読んでもどこの裁判所でどのような判断がされたのかまったくわからないのですが、とにかくiPhoneの販売差し止め(何に基づくものか不明ですが…)の適否については北京知財法院で争われるようなので、結論がひっくり返ることを祈るばかりです。

※ iPhoneの画像はすべて、アップル公式サイト及び公式ショップから引用しました。
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