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『パテント』に記事掲載されました

日本弁理士会が発行する月刊誌、『パテント』の今月号(9月号)の特集が「模倣品対策」でして、私も義烏絡みの記事をひとつ寄稿しました(偉そうに言っていますが、パテントを作る委員会に知り合いの弁理士がいて、中国絡みで書くよう頼まれただけです)。

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そもそも弁理士以外の方は『パテント』をご存知でないと思いますが、ざっくりいうと弁理士会の会報誌のような位置付けの雑誌です(こんな表現をすると怒られるかも)。弁理士には毎月全員に強制的に送られてきますが、それ以外は、官公庁や裁判所、警察、税関などの知財関連の機関の方を除いては、あまり目にする機会がないかもしれません。基本的には弁理士が論文のようなものを投稿して、審査に通ると掲載されるようになっています。

私の記事は論文ではなく(まぁ形式的には論文なのかもしれませんが)、単に義烏と福田市場、さらに、義烏を介して行われる中国輸入というモデルについて、模倣品の観点から紹介するというものです。

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記事内容は、卸売に特化した義烏という街をざっくりと紹介し、そのトレードマークでもある福田市場について説明をした上で、福田市場やタオバオ、アリババなどから小口で模倣品を輸入し日本のネットで販売する「中国輸入」にも軽く触れ、それに対する効率的な対応策を提案するものです。

紙面の制限があり表面的な話しかできませんでしたが、おそらく法律専門家の観点から義烏を紹介する記事は史上初ではないかと思われ、また特に、「中国輸入」というわけのわからない偽物販売ビジネスについて広く世に紹介することができたことは有意義であったと考えています。

これまで規模が小さすぎて対応コストがペイしないため、中国輸入という偽物販売ビジネスは無視されてきたという現実がありましたが、比較的コストをかけずに効果的な対応ができるのであれば、権利者さんたちも動けるかもしれません。

そしてそうした小規模の偽物を大量に発信しているのが義烏だという事実を知っていただければ、より効果的な対応ができるようになる可能性があります。

本当は福田市場にある偽物商品の写真を大量に掲載して、偽物を売っているブースに突撃取材して・・・などをやりたかったのですが、『パテント』に載せる以上そういうわけにはいかず、一般論を紹介するに留めました。

また中国輸入についても、基本的には日本のアマゾンで売られるとか、最近はメルカリがやばいとか書きたかったのですが、具体的な名称を出すわけにはいかず、こちらも一般論として説明するだけになっています。

これらについてより具体的な内容をお知りになりたい方は、無料でセミナーをやっていますので、お気軽にお申し付けください。

なお、この記事は2ヶ月後にPDFで公開されますので、『パテント』を入手できない方は、そちらにお目通しいただければ幸いです。

※ ところでタイトルの 「ニセモノのふるさと」義烏と「中国輸入」 という表現は、カギ括弧の位置がイマイチよくわからないものになっていますが、まぁいろいろあったのです。本当はカギ括弧のないタイトルで提出したのですが、いろいろ問題がありそうということで、いろいろ検討した上でこの形に落ち着きました。お察しください。

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中傷レビュー投稿者の情報開示が命じられた事例から考えるアマゾンにおける模倣品対策

またも少し出遅れましたが、アマゾンに投稿された中傷レビューの発信者の情報開示を求めた訴訟において、裁判所が面白い判決を出したようです。

記事によると、アマゾンで中傷レビューを投稿されたNPO法人が、投稿者の情報を開示するよう求めていた件で、裁判所は、アマゾンジャパン株式会社に、投稿者のIPアドレスに加え、氏名、住所、メールアドレスの開示を命じる判決を下したそうです。

この話題のポイントは、2つあります。

ひとつは、IPアドレス以外の情報も、アマゾンに開示義務があると判断した点です。これまでの手続きの流れに従えば、まずアマゾンに対してIPアドレスの開示を請求して、その情報を基に、ISP(プロバイダ)に対して個人情報を開示する請求するという、二段階の手続きをすることになっていました。ところが本判決では、アマゾンに対して、IPアドレスのみならず、投稿者の氏名や住所なども開示するように命じました。これにより、アマゾンに対する一度の手続きのみで投稿者の個人情報を入手できることになり、開示請求をする方は手間・時間・費用を軽減させられることになりました。

もうひとつは、今回開示義務が課されたのがアマゾンジャパン株式会社であるという点です。ご存知の通り、Amazon.co.jpの運営主体は、Amazon.com Int’l Sales, Inc. 及び Amazon Services International, Inc. です(米国2社による共同運営)。日本法人であるアマゾンジャパン株式会社は対応窓口に過ぎないため、Amazon.co.jpで生じたトラブルについての訴訟は米国企業を相手に起こさなければならないとこれまでは言われていました。ところが本判決では、アマゾンジャパン株式会社に対して情報開示を命じました。これにより、米国企業と裁判をしなくてもいいこととなり、開示請求がかなりやりやすくなったといえます。

それぞれのポイントについて簡単にみていきます。

前者については、これまでもできるのではないかと言われていました。司法や行政などからの強制力のある命令があれば、アマゾンは情報を出さざるを得ないだろうというのが専門家の見解でした。実際にIPアドレスはこれまでもアマゾンなどのサイト運営者から開示されていました。

今回は、氏名や住所なども含めてアマゾンに開示義務があると判断された点に意義があるのですが、実はこの氏名や住所は、アマゾンに登録されている情報だという点に注意が必要です。従来のISPが開示する方法では、IPアドレスからユーザごとの接続IDや接続先サーバから住所などを特定します。一方で、アマゾンはそうした情報を割り出すことはできないので、アマゾンにユーザ登録されてある情報を提供することしかできないはずです。アマゾンでは、クレジットカードと電話番号さえあればアカウントが作れてしまいます。これらの情報は一時的なものを入手するのが簡単なので、虚偽の住所や氏名で登録がなされている場合、正確な情報が割り出せないという問題が残る点には注意が必要です(このような事情を知って最初から虚偽情報で登録する人は実際にいます)。そのようなケースでは、結局従来通りの方法でISPに情報開示請求をするしかありません。

あとは、今後は同様の訴訟を提起すればこうした情報を開示させられるのでしょうが、弁護士会照会ではどこまでの情報が出てくるのか(アマゾンには出す義務があるのか)も今後の検討課題でしょう。

さて、今回特に重要なのは、後者です。今回原告は、本件訴訟に先立ち、アマゾン米国法人を訴えていたそうです。その後日本法人も訴えたところ、「Amazon.co.jpの運営主体はアマゾンジャパン株式会社である」と認めたため、米国法人に対する訴えは取下げて、アマゾンジャパンに対する請求一本に絞ったという経緯があるようです。

これまで、アマゾンと書面等でやり取りをすると、サイトの運営主体は米国法人であり、日本法人は対応窓口にすぎないという注意書きが必ず記載されていました。一方で、アマゾンの倉庫(FBA)はアマゾンジャパン・ロジスティクスが運営しているという事情があり、サービス全体としては誰が実質的な運営主体がよくわからない状態となっていました。こういった事情のため、Amazon.co.jpにおける問題について訴訟を起こすならば、米国法人を相手に訴えるしかないというのが一般的な考えでした。それが、アマゾン自ら実質的な運営主体はアマゾンジャパン株式会社あると認めたことにより、アマゾンジャパンを訴えればいいとされた点で、本件には大きな意義があるといえます。

本判決は、アマゾンにおける知的財産権侵害への対応にも影響すると思われます。例えば、Amazon.co.jpで商標権や意匠権などの知的財産権侵害をする商品が販売されているのを発見したら、出品取り下げなどをアマゾンジャパン株式会社に申告することになります。ところが、解釈の差などの理由で、アマゾンがスムーズに手続きをしてくれないことがあります。そうしたときに、これまではアマゾン米国法人を相手に訴訟を起こさなければいけないと考えられていたので、かなりハードルが高く、ネット販売では侵害の規模が小さいことが多いことを考え合わせると、手間やコストの観点から、訴訟提起できないという問題がありました。もしアマゾンジャパン株式会社を相手に訴えればいいということであれば、訴訟のハードルが格段に下がる(例えば書類の翻訳料がなくなるだけでかなりのコスト削減になります)ので、今後はAmazon.co.jpにおける知的財産権侵害の問題は裁判で争う例が増えるかもしれません

また、FBA倉庫(フルフィルメントセンター)に偽物が納品されている可能性が高いことがわかっているときに、出荷差し止めや、その前段階として工場への立入検査を希望することは多くあります。これについても、これまでは米国法人を訴えるのは大変なので諦める事例が多かったのですが、今後はアマゾンジャパン・ロジスティクスを訴えればいいのだろうということが明らかになったように思います。

そういう意味で、本判決は中傷レビューに関するものですが、模倣品対策の観点からも、今後の実務に与える影響は大きいと思われます。

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『フランク三浦』商標問題について考える

数日前になりますが、面白いニュースが出てきました。

超高級腕時計の『フランク・ミュラー』のパロディ商品として人気の高い、『フランク三浦』という腕時計のブランドがあり、これが「時計」等を指定商品として商標登録されていました(商標登録第5517482号)。

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これに対して、本家フランク・ミュラー側が無効審判を請求したところ、特許庁審判部は、これを無効とする審決を出しました(無効2015-890035)。これを不服として、フランク三浦側が知財高裁に審決の取り消しを求めていたものについて、知財高裁は請求認容の(すなわち商標登録は有効という)判断を下したというものです。

現段階ではまだ判決文が入手できないためソースはニュース記事のみになってしまいますが、まぁ知財高裁らしい判断かなという印象です。

今回主に争われたのは、商4条1項11号の該当性だと思われます。主引例として商標登録第4978655号(『フランク ミュラー』の標準文字商標)が挙げられ、これとの類似性が議論されたようです。

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日本では、パロディの商標を認めるかどうかという基準はありません。なので通常の商標として、両商標の類似性を判断することになります。(ただし後述するようにパロディならではの論点も多少あります。)

ざっくりみて、『フランク三浦』は「フランクミウラ」と発音されるので、称呼は『フランク・ミュラー』と類似するでしょう。そもそもパロディ商標なので、似ていて当然です。実際この点は特許庁審査・審判・知財高裁の各段階で共通の判断がされています。逆に、外観は一見して非類似でしょう。判断が難しいのは観念で、無効審判と知財高裁ではここで差が出ているようです。

審査基準によると、11号における商標の類否判断では取り引きの実情が考慮されることになっています。が、特許庁の審査段階では、単純に両商標を比較(離隔観察)して、外観や観念が異なるとして登録になったものと思われます。実際に、審査段階では拒絶理由は一度も通知されていません。

それが、無効審判では、称呼は当然類似するとして、観念についても『フランク三浦』からは『フランク・ミュラー』を想起するとして、類似性を肯定し、商標登録を無効としました。フランク・ミュラーの著名性を考慮しての判断です。

一方で知財高裁では、称呼は類似するものの、外観に加えて観念についても、「三浦」部分が日本人を想起させるとして、類似性を否定したようです。どうやら知財高裁は離隔観察の時点で商標非類似と言っているようです(判決文を読まないと正確なことはわかりません)。

この判決はさらに面白い判断をしています。上記だけでバッサリ「非類似」と切ってしまってもよかったのでしょうが(実際にそうしたのかもしれませんが)、知財高裁では両者の価格帯などに触れ、需要者が両商標を混同するおそれがないことを述べています。この「混同」が狭義の混同を指すのか、広義の混同まで含むのか、現段階ではわかりませんが、もし15号との絡みで出てきた議論なら面白いかもしれません。

11号の類似における混同とは、狭義の混同だとされています。つまり、フランク三浦の時計の出所がフランク・ミュラーだと需要者が混同するかというと、それはしないだろうと。だから両商標は非類似なのだという話ならば、それなりにしっくりきます。

一方で15号における混同とは、広義の混同までを含む概念だといわれています。つまり、フランク三浦の時計がフランク・ミュラーから出されているとは思わないにしても、日本における低価格帯向けの時計を製造販売する子会社や関連会社から出されているのではないかと需要者が思う可能性があるのであれば、15号に該当するとして無効にされるはずです。本件は15号にも該当しないと判断されているものですから、もし15号該当性の議論において知財高裁が「ミュラーは多くが100万円を超えるのに対し、三浦は4000円から6000円と安いことなどから、「(広義の)混同は考えられない」と」(同MBS)判断したのならば、この部分はさらに面白いネタとなるでしょう。このあたりは判決文が入手できるまではただの妄想です。

ところでこの判決は弁理士としてなかなか興味深いです。

実際にこの種の相談をよく受けます。仮に「フランク・ミュラーのパロディとして『フランク三浦』という時計を販売していいか」と相談されたら、どう答えたらいいのでしょう。「問題ない、GO!」とはなかなか答えられません。なにせ特許庁の審査及び審判、知財高裁で判断が分かれているのですから、事前に正解を予測しろというのは無理というものです。しかもこれは登録性における類否の議論です。侵害性における類否の議論ならどうなるか、現段階でもわかりません。

このような場合に、私は、どうしても使いたいなら実際に出願してみるようアドバイスすることがあります。出願してみて登録になれば特許庁のお墨付きを得られたとして登録商標を堂々と使用すればいい* ですし、登録できなければ類似商標ということでしょうから使用しなければいいです。商標出願は費用も安いですし、判断が出るまでの期間も4ヶ月程度ですので、複数の弁理士に何十万円もかけて鑑定書をもらったり、特許庁に判定を請求するくらいなら、出願して審査官に判断してもらう方がコスパがいいでしょう。

* ただし、後に無効となった場合には、仮にそれまで商標登録されていたとしても、使用していた期間の損害賠償責任を負うというのが裁判所の立場ですから、100%リスクを回避できるわけではありません。

このような方法を採った場合、本件のように審査段階で離隔観察により非類似と判断され登録になったとして、その後無効審判やその取消訴訟で取り引きの実情が考慮された結果、無効とされてしまうリスクが実務上どれだけあるかは非常に悩ましいところです。本件では審査段階と知財高裁が同様の結論だったので結果的にこのような問題は生じなかったのでしょうが、逆の結論のケースも当然考えられます。

現実問題として、特許庁の審査段階で取り引きの実情を大きく考慮することは不可能でしょうし、今回のように拒絶理由さえ通知されずに登録されてしまうと、出願人にはそのための資料を提出する機会すら与えられません。そういうことは事後的に無効審判で争えということなのかもしれませんが、コストの観点からは個人や中小企業には優しくない制度です。本件のように判断が分かれる可能性があるものについては、審査段階で一度拒絶理由通知を打っていただきたいものです。本件などは拒絶理由通知が打たれていてもよかったケースなように思います。

さて、この判決のニュースは話題になっており、弊所にも「パロディ商標って大丈夫なんですか」という問い合わせが既にありました。たしかに、これまでの日本での商標の争いをみると、フランク・ミュラーのような明らかに著名な商標の持ち主が負けるケースは珍しいように思います。多くの場合、著名ブランドが正義であり、真似をする方が悪なので、よっぽどのことがない限り著名ブランド側が負けることは少ないでしょう。

だからといって「有名ブランドも少しいじればパクってOK」というわけではありません。前述のとおり、日本ではパロディだからどうかという基準はありません。結局は両商標が類似するかを議論するだけです。その過程で、本件のように「需要者層が異なる」というパロディの特徴が結論に何らかの影響を与え得るという程度です。そのような中で、今回フランク三浦は、本気でパロディをしたからこそこのような結論を得たと考えていいと思います。なぜならば、「需要者層が異なる」ことが類否判断に大きく影響するのであれば、粗悪な模倣品についても類似商標が登録しやすいのかというと、そんなことはないはずだからです。

例えば、『GUCCHI』の偽物の『GOCCHI』というブランドがあったとして、これを付したカバンが3千円台で売られていたらどうでしょうか。それを買う人はまさか本物のグッチだとは思わないでしょうから、需要者層は両者で異なります。ならば『GOCCHI』を商標登録して販売することを認めていいかというと、そんなことはないでしょう。やはりパロディをやるにしても、離隔観察の段階で非類似だと判断される商標を選択しないと危険だということです。(そして非類似な商標でパロディをすることは難しいはずです。)

結局、パロディをするにも真剣にやらないといけないということです。フランク三浦は、本気でパロディをした、だから裁判所も許してやろうという結論を下したのだと思います。彼らは自ら時計を作り、しかもその精巧さや品質に定評があったと聞きます。そのような、そもそも特徴のある時計に、著名なフランク・ミュラーをもじった名称をつけて、しかも「三浦」という日本で一般的な姓を選んだことで、一種のギャグ/ユーモアとして評価できるレベルに達していたのでしょう。著名なフランク・ミュラーのブランド力を利用して偽物を売ろうとした事例とは違うということです。

ただ正直、釈然としない部分もあります。価格帯が異なるから需要者が混同しないと言いますが、ではフランク・ミュラーが大衆向けの1万円くらいの時計を売り出したら結論は変わるのでしょうか。

フランク・ミュラー側は、「信用や顧客吸引力への『ただ乗り』目的だ」(朝日新聞DIGITALと主張しているようで、これはまさにその通りでしょう。もし「フランク・ミュラー」という著名ブランドがない世界だったなら、「フランク三浦」はどれだけ売れたでしょうか。ただ乗りではあるが、商標法で保護される利益を損なっていないという判断でしょうか。いまいち納得できません。

それにこれはあくまでも審決取消訴訟です。侵害訴訟でも同じ結論となるでしょうか。さすがにこの判決がある以上、今後商標権侵害訴訟が提起されても、そこで商標非類似と言うのは難しいかもしれません。そういう意味で、フランク・ミュラー側はいきなり無効審判を請求するのではなく、侵害訴訟から入ってその中で類似性や商標登録の有効性を争った方がよかったかもしれません(いまだから言えるわけですが)。

また、不正競争防止法の訴訟ならば、フランク三浦が差し止められる可能性も決して低くないと思われます。仮に商標部分が非類似だとしても、文字盤のデザイン(※フランク・ミュラーの文字盤デザインはかなり特殊的です)もよく似ています。それを商品等表示として類似性が争われた場合、文字盤の類似性を凌駕するほどの非類似性が商標部分にあるかは微妙だと思います。おそらくフランク・ミュラーの著名性は揺るがないでしょうから、2号の適用があります。2号では、著名ブランドの品位を落としたり(ポリューション)、唯一的な地位を傷つけたり(ダイリューション)する行為も制限されるので、フランク三浦の時計はそれらに該当するかもしれません。

そういう意味で、フランク三浦がこのまま販売を続けられるかわからず、まだまだ微妙な案件だといえると思います。

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ECにおける他人の商標の使用と商標権侵害

アマゾンや楽天などのECショッピングモールで、他人の商標を使用することが許されるのはどういう場合なのでしょうか。逆にどのような場所や方法で使用すると問題になるのでしょうか。これも昨年問い合わせが多かったテーマのひとつです。

商品ページヘのアクセスを増やすために、キーワードとして他人の商標を用いたいという需要はかなりあるようです。例えばバッグの商品ページの一部に「エルメス」や「バーキン」などのキーワードを入れて、Googleなどでそれらのブランドを検索した人を誘導するわけです。

こうした行為が需要者を本来の目的とは誤ったサイトへ誤認誘導するものであり、問題がありそうだということは常識でわかると思いますが、商標権侵害となるかについては検討の余地がありそうです。

この問題には、以下の裁判例が参考になると思われます。

【事案の概要】
X(原告)が以下の構成からなる商標についての商標権を有していたところ、競業他社が「<meta name=”description”content=”クルマの110番。輸入、排ガス、登録、車検、部品・アクセサリー販売等、クルマに関する何でも弊社にご相談下さい。”>」と、メタタグに『クルマの110番』の商標を使用した行為が、商標権侵害に該当するかが争われました。

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本件商標(商標登録第4239953号)

【結論】
商標権侵害となる。

【理由】
商標及び指定役務の類似性の検討は省略しますが、類似と判断されています(おそらく問題ないでしょう)。その上で、上記のようなメタタグへの記載が商標的な使用であるかについては、MSNサーチの検索結果画面にその内容が表示されたことから、商標的な使用であると判断されました。

【解説】
メタタグとは、そのウェブサイトの属性や概要などを記載するためのHTMLタグで、そのページをWebブラウザで開いても、メタタグ部分は表示されません。ただし一部の検索エンジンではそこに記載された内容を参酌して検索順位を決定したり、上記MSNのように検索結果自体に現れたりします。上記判決では、この「検索結果に現れた」という事実が重視されました。

ウェブサイト(ECの商品ページを含みます)における商標の使用は、一般に、商標法2条1項8号に定める「広告的使用」に該当します。商品名などにもろに用いると、同2号に該当することもあります。

一方で、商標は商品の出所の混同を防止するための表示ですから、目で確認できることが何よりも重視されます(もちろん発音でもいいのですが、結局は見えないモノは発音もされないので、結局は同じことです。※今後音の商標などが登録されるようになると事情が変わるかもしれません)。そのため、メタタグのようにブラウザで表示されないものは商標として機能していないのではないかという疑問が生じて、問題になるのです。

そういう意味で、MSNサーチの検索結果に現れたことを根拠に登録商標を商標的に使用したとして商標権侵害を認定した上記判決は、妥当だと考えられます。

ただメタタグは多くの検索エンジンでは検索結果にも現れないことから、例えば今後MSNサーチの仕様が変わったときには、同様の事案では異なる判断がなされる可能性もあります。また、この種の問題についての裁判例がおそらく上記大阪地裁のものしかないことから、これの先例的価値がどれだけあるかもよくわかりません。ちなみにこの問題については、外国では国により判断が割れています。

さてこのように先例的価値が不明なクルマの110番事件ですが、上述のとおり一定の合理性があるので、これを参考にECサイトでどのように他人の商標を使ったら商標権侵害となるのかを検討してみます。

結局重要なのは「その商標が目視で確認できる」という点なので、商品タイトルや商品説明に用いると商標権侵害となる可能性が高いでしょう。商品のパッケージに商標を印刷して、その画像を掲載しても同様でしょう。アマゾンのブランド欄に記載してもやはりアウトでしょう。

一方で、例えばアマゾンのキーワード欄に他人のブランドを記載することは、少なくとも現在の商標法では違法性を問えないように思います。そのような行為はアマゾン内の検索順位に影響を与える可能性が高いですが、キーワード欄の内容はどこにも表示されず、他人には確認のしようがありません。確認できないのでそもそも裁判などで非常に争いづらいという事情もあるでしょうし、仮に争えても現行の商標法の枠組みでは商標権侵害とはなかなか言えないと思われます。このような行為により明らかに検索結果がおかしいと思われる場合は、法的手段よりもまずはアマゾンに対して個別に対応を迫っていくことになると思います。

なお上記米国アマゾンの裁判では、アマゾンで販売していない商品を検索したときに他社製品が検索結果に現れる仕様について、アマゾンの商標権侵害主体性が認められています。

また、従来からよくある手法ですが、背景色と同色の文字を用いて、説明文に他人のブランドをキーワードとして記載する行為もあります。これも結局はその部分を選択すれば目視可能ですから、商標法上問題になる可能性が高いです。

いずれの場合も、商標が目視できても商標的に使用しているのかという点も問題になるでしょう。また、「◯◯風」などとしてそのブランドそのものではないと明記すれば問題ないのではないかと考える人もいるようです(この点についてはこちらの記事を参考にしてください)。

結局、他人のブランドをキーワードにして自分のウェブサイトや商品ページに誘導しようという発想がそもそも泥坊根性なわけですから、そんなことはせずに自分のブランドを育てていく方に労力を割いていくのがよいでしょう。

アマゾンにおける模倣品販売についての講演会のご報告

年末で案件が立て込んでおり報告が遅れてしまいましたが、先日、一般社団法人電子情報技術産業協会様(JEITA様)にて、アマゾンにおける模倣品販売の現状と対策について講演をして参りました。

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日本のECサイト/モールではおびただしい数の模倣品が販売されており、特に昨今はアマゾン(Amazon.co.jp)における模倣品販売が圧倒的に大きな問題となっています。

かつては、個人でも簡単に出品できることから、ヤフオクが模倣品販売の最大拠点でした。特許庁によるネット上の模倣品対策も、平成17年に「模倣品の個人輸入及びインターネット取引に関する事例集」が公開されたあたりから本格的なものが始まったように思いますが、これは主にヤフオクが想定されていました。

ところが最近は、ヤフオクよりもアマゾンにおける模倣品販売の方がずっと大きな問題になっています。理由はいくつかあるのですが、

  1. アマゾンの出品者(母数)が多い
  2. アマゾンでは模倣品の出品が極めて容易である
  3. ヤフーの模倣品対策が比較的進んでいる

ことなどが挙げられると思います。

これは、逆にいうと、アマゾンでは模倣品対策が非常にやりにくいことを意味しています。なぜアマゾンでは模倣品対策がやりづらいかというと、

  1. アマゾンはもともと本屋であり、そのシステムを他の商品に広げた
  2. FBA(アマゾンの倉庫業)が模倣品の格好の隠し場所になっている
  3. アマゾンは米国企業である

ことなどが原因となっています。

すなわち、アマゾンのシステムはもともとネット上で本を効率的に販売するよう設計されているため、それを本以外の商品に適用すると、かなり無理があるのです。実際、あらゆるECサイト/モールの中で、アマゾンのみが特殊な出品システムを採用しています(商品カタログ方式)。そして、アマゾンの倉庫に偽物を放り込んでおけば、あとは本物とごちゃ混ぜにしてアマゾンが勝手に模倣品を販売・発送してくれるのです。

これによりアマゾンでは本物と見せかけて(紛れさせて)模倣品を販売することが極めて簡単にできてしまうのですが、さらに問題なのは、そうした模倣品に対応しようとしても、アマゾンは米国企業なのでなかなか柔軟な対応をしてくれないことにあります。模倣品へ対応しようとするとき、アマゾンジャパン(日本の会社)の法務部が窓口となってくれるのですが、彼らは米国アマゾンが定めたルールの枠内で形式的な対応をしてくれるに過ぎません(そこまでの権限しか与えられていないのでしょう)。かといって米国側に直談判しようとすると、「日本のことは日本で解決しろ」と突っぱねられてしまいます。結局、米国アマゾンとアマゾンジャパンの狭間で、どのあたりに落とし所を見つけて、アマゾンジャパンに有効的に動いてもらうかということを考えながら対応していく必要があるのです。

弊所ではアマゾンでの模倣品対応事例が複数ありますので、そうした経験に基づいたお話をさせていただきました。

ところで、これまで弊所では、クライアント様からご依頼があった場合のみ、個別にセミナーや説明会を開催してきました。そしてそのようなセミナーにより、クライアント様の事業の加速に大きく貢献できる例が多いことを肌で感じました。

そこで来年からは、こうしたセミナーを一般の企業様にも開放し、広く開催して参りたいと考えています。セミナーは原則としてオンデマンドで行います。すなわち、弊所が開催して受講生を募るのではなく、弊所弁理士(ほとんどの場合私、越場)が貴社にお伺いして、貴社専用に講演するスタイルを採用させていただきます。これにより、貴社のご事業に即した「濃い」内容を直接お話しすることができるようになります。

また、一定の条件のもと、既にスライドが用意されているセミナーについては、無料にてご受講いただけます。詳細はこちらからご確認いただけます。セミナーのみのお申込みももちろん大歓迎ですので、お気軽にお申込み・お問合せください。

日本人による模倣品製造・輸入について考える

私はいま中国の義烏(イーウー)という街に駐在しています。

義烏には世界最大の卸売市場(通称福田市場)があり、最近はネットで簡単に販売できるので、日本人も多く買い付けに訪れます。

そのような日本人の多くが、既に日本で売れている商品をサンプルとして持ち込んで、福田市場の卸問屋や工場に、同じ商品を作らせています。

その上で、オリジナル商品の本体やパッケージに入っている商標(ロゴなど)を取り除き、代わりに自社ブランドの商標を付したものを製造しています。

そうすれば商標権を侵害することがないので、輸入販売しても問題ないと考えているようです。

「このような手法に問題はないですよね?」という問い合わせが毎日のようにあります(特に義烏にいらした方はみなさんお尋ねになります)が、問題ないわけがありません。

そもそも他人がデザイン・開発した商品のコピー商品を製造しているのですから、知的財産権を侵害する可能性がかなり高いです。怪しいセミナーやコンサルタントがこのような手法を教えているようですが、そんなものに騙されず、常識で危険だと感じる感性は、日本人の大人として当然持っていただきたいものです。所詮偽物・模倣品を作っているだけですから、それが家族や友人に対して誇れる仕事なのか、一度じっくりと考えていただきたいと思います。

特許庁が毎年発表している「模倣被害調査報告書(2014年版)」によれば、最も多い模倣被害は「デッドコピー」で、以降「デザイン模倣」、「ブランド偽装」と続きます。

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デッドコピーとはそっくり同じ形のコピーを作るという意味で、デザイン模倣とは既に売れている商品のデザインを少しだけ変えて作る場合です。ブランド偽装とは、他人の商品から商標を取り除き自社の商標を付す場合を含みます。まさに義烏で多くの日本人が行っている行為です。

また、そうした模倣の手口はどんどん巧妙化していると言われています。同報告書によると、売れている商品のデッドコピーを作り、ノーブランド品として販売する手法や、中国の工場に画像を送りOEM生産させる手法が、巧妙化する模倣手段の上位にランクインしています。

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アリババなどのサイトを使い誰でもネットだけで簡単に中国の工場にOEM生産を発注することはできるようになったことが原因ですが、工場にサンプルを持ち込んでそれの偽物を作らせる原始的な手法もまだまだ現役です。

そうした偽物は、当然正規商品よりも安く売られます。

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そして、それらの偽物の多くは、インターネット上で販売されています。

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こうして見てみると、個人レベルの事業者が中国で偽物を買い付けたり中国の工場に作らせたりする行為は、もはや見過ごせない規模にまで拡大していると考えられます。各輸入者の取引数量は少なくても、中国輸入全体ではかなりの規模となっているものと思われます。

中国輸入は、日本経済にとって百害あって一利なしです。そもそも輸入自体が日本経済に寄与しないと言われています。日本円を外貨として外国にばら撒いた上に、製造等において日本での雇用を生み出さないからです。そのため輸入商品には関税が課されますし、輸入業には公的な補助金が出ることはほとんどありません(少なくとも仕入代金への補助金はまずないと思います)。

さらに中国輸入は、日本企業が開発した商品の模倣品を日本で輸入・販売するので、もろに日本企業の市場と競合し、シェアを奪います。日本企業の正規商品の価格には開発や広告にかけた費用が含まれていますが、中国輸入の模倣品はそのコストを回収する必要がないので、上述のように正規商品よりも安く販売できます。こうして正規商品のシェアが奪われてしまうと、日本企業は開発にかけた費用を回収できず、体力を奪われていき、ひいては日本経済自体の衰退に繋がっていきます。中国輸入はそもそも日本企業が創りだしたシェアを横取りしているに過ぎないので、いくら売り上げても日本経済には一切寄与しません。本来日本企業が得るべき利益を窃取しているだけなので、到底まともな商売とはいえないないですし、日本企業がそのような者への対応にコストを掛けなければならないことを考えると、もはや国家として対応すべき問題だといえるでしょう。

まともな日本企業の方々には、「中国輸入」の業態がどのようなものかピンとこないかもしれません。しかし、本記事で指摘したような模倣品の製造・輸入・販売はかなりの規模で行われています。それもサラリーマンや主婦が副業として気軽に行うケースも決して少なくありません。売れている日本商品の情報を中国工場に提供してその模倣品を作らせるとか、中国企業が既に商品化した模倣品に自社ロゴをプリントしてOEMと称して比較的小ロットで製造することは、とても簡単です。そのような模倣商品をクーリエ(小口空輸便)やコンテナ混載便でパラパラと輸入し、アマゾンなどのインターネットショッピングサイトで販売する手法はもはやひとつの個人向けビジネスとして確立しています。こうした個人レベルの模倣品販売への効率的な対応が、現代の日本企業が直面する課題だといえます。

※引用したグラフの出典は、いずれも『2014年度 模倣被害調査報告書』(特許庁)です。
本記事にいう「中国輸入」とは、日本で売れ行きの良い商品の模倣品を中国で仕入れるか製造して輸入する業態をいうもので、中国からの輸入を広く含む概念ではありません。多くの日本企業が商品の製造を中国で行っていますが、自社で開発した商品を、必要な調査を行った上で、製造部分のみ中国で行うような業態はここにいう「中国輸入」には含まれないことにご留意ください。
中国輸入業者は「他社製品の模倣は大企業でもやっている」などと言い自己の行為を正当化しようとしますが、他社製品を参考にしつつ独自の商品を開発し、他人の知的財産権を侵害しないか調査を行った上で中国で製造する業態と同列に語ることは到底できません。

OEM・ODMと知的財産

最近は中国の工場に小ロットで製造を依頼できるようになったため、個人レベルの方でも工場と直接取引きをしてオリジナル商品を製造する例がかなり増えました。

それは良いことなのですが、そのような商品を製造し、日本に輸入して、いざ販売するという段階で「この商品を販売しても法的な問題がないか教えてください(しかも無料で)」という問い合わせが結構あります。このようなお問い合せをfacebookなどの個人メッセージでいただいても対応できないので閉口しているのですが、それ以前に商売の進め方として問題があります。

多くの方は「これはOEM生産なので大丈夫だと思いますが、念の為専門家の意見を聴かせてください」などと仰るのですが、OEMであることと他人の知的財産権侵害をするかどうかは、基本的には関係ありません。

まずは用語の定義を明らかにすべきですが、OEM(Original Equipment Manufacturing)とは、自社で開発した商品を製造するときに、製造能力がないとか足りないなどの事情により、製造部分だけを他社に委託する製造方法をいいます。

他社工場で製造するものの、商品開発自体は独自に行うため、製造するのは当然オリジナル商品となりますし、商品には自社のブランド(ロゴなど)を入れることになります。製造にあたっては設計図や技術情報を製造業者に提供しますし、技術指導をしたり人員を供与することもあります。

また、ODM(Original Design Manufacturing)という製造方法もあります。これは製造を受託する工場側が商品のデザインまでを開発するケースで、そのデザインに自社のブランド(ロゴなど)を入れた商品を工場に製造させます。

私に問い合わせのあるケースの多くは、アリババで工場を探してそこに製造委託し、商品に自社の商標を印刷等しています。アリババでは通常、工場側が製造できる商品を写真付きで公開しているので、発注者は数量を指定してその商品の製造を委託します。その商品に自社のロゴなどを入れるか、せいぜい多少のデザイン変更をする程度の改変をするのみで、基本的には工場側が提示した商品をそのまま製造します。このような製造方法がOEMなのかODMなのかは難しいところですが、発注者側が商品開発にほとんど寄与していないことを考えると、ODMに分類するのがよいと思われます。

さて、こうして中国の工場を利用して自社ブランドの商品を簡単にODMできる時代になったわけですが、そのような方法で製造した商品も、単に中国商品を転売する場合と比べて、知的財産権侵害をするリスクはほとんど変わりません。これは上記の説明でおわかりいただけると思うのですが、独自に発注し製造させているとはいえ、その骨格は中国の工場が開発した商品にほとんど手を加えずそれを製造、輸入し、日本で販売するからです。中国で仕入れられる商品のほとんどが偽物であるという話を以前しましたが、アリババに出ている商品も中国工場がどこかの商品を模倣したものですから、それを自社のブランドの商品として製造させる方法も、同様にほとんどが偽物を製造していることになります。

このような偽物の製造方法が蔓延している原因には、「オリジナルを少し改変すれば偽物ではなくなる」という誤った認識があるものと思われます。知的財産の世界では、他人の権利内容を少し改変すれば権利侵害とはならない、とはなっていません。例えば意匠権や商標権は、登録された意匠や商標と類似する意匠や商標まで権利が及ぶので、多少の改変をしても権利範囲に入ったままのケースが多くあります。また、権利範囲から外れるよう大きな改変をした場合は、別の権利の権利範囲に入ってしまう可能性があります。法的な構成はともかく、特許権や実用新案権、著作権、あるいは不正競争防止法でも事情はほぼ同じです。結局、少し改変したしたかどうかではなく、自分が製造・輸入・販売する商品が他人の知的財産権を侵害するかどうかを確認することが重要なのです。

実際に、従来のOEMまたはODMでは、製造に入る前にこのような調査をすることが常識です。例えばアップルはほぼ100パーセントの商品をOEMしていることで有名ですが、開発段階で世界中の知的財産権の調査をしているはずです。また、多くの日本企業も中国の工場と提携してOEM生産をしていますが、やはり開発段階、少なくとも製造前にはこうした調査をすることが常識です。弊社にご依頼いただく調査も、当然ほぼすべてがこのような段階で行うものです。そのような前提のもとに日本で流通する中国商品の品質や合法性が保たれているのであって、単にアリババで発見した商品をOEM/ODMした商品について同列に語ろうとすることはできません。

その意味で、販売前に違法性の調査を依頼してくる人は一見正しいのですが、いかんせん「オリジナルを少し改変すれば偽物ではなくなる」という考えのもとに既に商品を製造し、日本に輸入までしてしまっているので、もはや権利侵害を議論すべき段階をかなり過ぎてしまっていることになります。本来ならば製造に入る前、商品の開発段階でそのような検討すべきでしたが、自社で開発をしていないので検討することができなかったのでしょう。そもそも販売直前の段階で調査を依頼し、販売NGの調査結果が出た場合はどうするつもりなのでしょうか。「多少改変しているのだから法律上問題ない」という前提がそもそも誤っているので、せめて発注する前にご相談いただきたいものです(それでも無料でアドバイスできる範囲は限られてしまいますが)。

なお、アリババなどのネットを用いず、中国の工場に直接サンプル(他社商品)を持ち込み、それの類似商品を製造するよう交渉するやり方は昔からありますが、これが単に偽物を製造しているということはいうまでもありません。特に最近はそうして製造した偽物を日本のネットで誰でも簡単に販売できるため、日本人による偽物のOEM/ODM生産はますます増加しています。ネット上で自社商品の偽物が販売されていることを発見したら、すぐに専門家に相談されることをお勧めいたします。

知財調査の重要性 – 商品開発と知的財産 –

任天堂の岩田聡社長が他界されました。謹んでご冥福をお祈りします。

今日は同じ任天堂の横井軍平さんのインタビュー記事をご紹介します。

任天堂といえば、言わずと知れた日本を代表するゲーム機器及びゲームソフトのメーカーです。ファミコン、ゲームボーイ、Wiiなど大ヒットとなったゲーム機は数知れません。

上記記事中、横井さんはおもしろいことを話されています。

開発をするときに、他社のもっている知的財産権を侵さずにつくるって、ほんとうはものすごくむずかしいわけです。日本の電機メーカーなんかはお互いにそれがわかっているから、クロスライセンス契約なんかを結ぶ。

それ以前というのは、けっこうイケイケで、他者の特許や実用新案などを考えずにものをつくっていたような時代もあったわけです。企業の法務部にいた人がいってましたけど、昔の法務部というのは、開発部がむちゃくちゃをやるので、それの尻拭いをする、そのために外と戦うのが法務部みたいな部分があったと。

それがあるときから、知的財産権がうるさくなって、それを侵さないように監視する社内警察のような部署になってしまったと。180度やっていることの方向性が違ってしまったといっていました。

新しい商品を開発した、さあ販売するぞという段階で、実は他社の知的財産権(特許権や実用新案権、意匠権など)を侵害していると気付くケースは少なくありません。そうなるとそのまま商品は販売できませんから、仕様変更するか、ライセンスをもらうか、無効審判などで対象となる権利を潰すか・・・など面倒な手続きを強いられます。当然商品の販売時期が遅れ、機械損失が生じます。

販売前に気付けたらまだましで、販売後に権利者から指摘されて気付いた場合などは、訴訟対応など高額な費用が発生する可能性があります。

上記横井さんのお話は、天下の任天堂での経験談です。常に時代の最先端をいく商品を開発し続ける任天堂でさえ、新しい商品を作ると他人の知的財産権を侵害していることが多いと言っているのです。

これが他人の商品の模倣品だった場合はどうでしょうか。例えば、中国で製造され、流通する商品。

私はこれまでに、中国や香港で開催される展示会に数十回参加しました。もちろん住んでいる浙江省・義烏では、福田市場に数えきれないほど行きました。無数の中国商品を目にしてきましたが、中国メーカーが独自で開発した商品は、ほとんど見たことがありません。ゼロと言ってもいいかもしれません

中国で出会う商品は、ほぼ100%、模倣品です。日本や欧米など先進国のメーカーが開発した商品を真似た商品です。それをまるまるコピーするか、多少手を加えて変形させた商品。それしかないと思っていただいてOKです。

少し話が逸れますが、なぜこれほどまで模倣品が多いのかというと、そこには中国の商売の特徴があります。日本では「働く」というと、どこかの企業に就職することを想定するのが普通です。多くの場合は大企業に雇用されることを第一に考えますし、それ以降でもどこかの中小企業に雇用されるケースがほとんどです。

一方で中国では、人口に対して大企業がそれほど多くないこともあり、企業に就職することはいくつかある選択肢のひとつに過ぎません。企業に就職せずに、自分で事業を起こすことが日本よりもよっぽど盛んです。こうした中国の特徴は、13億総個人事業主(13億総老板)などと表現されることもあります。

つまり多くの商品が、家族経営のミニ工場で作られるか、そうした工場で作られた部品を中規模の工場で組み立てているだけなので、そもそも商品開発などしません。せいぜい売れている商品を買ってきて分解して似た商品を作ろうとするだけなのです。

さて、こういうわけで模倣品しかない中国市場ですが、もちろんすべての模倣品が他人の知的財産権を侵害するわけではありません。例えば既に権利が切れている技術・デザインや、そもそも権利が発生していないものもあります。あるいは、日本では特許権などを取得しているが、中国では権利がないため、中国の工場で製造・販売することは問題がないこともあります。

日本である商品を製造する人、あるいは外国で製造された商品を日本に輸入する人は、その商品が日本で、他人の知的財産権を侵害するかしないか、十分に調べる義務があります。特許法、実用新案法、意匠法、商標法、すべてにそう書いてあります。他人の権利を知らずに侵害した場合に、「そんな権利が存在するなんて知らなかった」という言い訳は通用しません。日本で商売する以上、それを事前に調べる義務があるのです。それがいまの日本という国の価値観です。

このような義務が課せられているにもかかわらず、中国製品を輸入する方の多くは、そうした調査を一切していません。つまり権利侵害をするかどうか、要は違法かどうかがわからない商品を輸入し、日本で販売しているのです。最先端の商品を開発する企業でさえ多くの商品が権利侵害をするのに、模倣品しかない中国商品を輸入する人が権利侵害を一切調査していないのです。これは非常に恐ろしいことです。

インターネットが発達し、仕入れも販売も、誰もが自宅にいながら手軽にできる時代になりました。しかし、いくらそうした部分が簡略化されたとしても、知的財産についての調査義務までが免除されたわけではありません。自分が輸入し、販売する商品が違法でないことを確認してから販売することで、日本で商売をする人として最低限の土俵に乗ることができるのです。

横井さんのお話にあるように、大企業ならばそうした調査は社内の法務部や知財部で行うことが多いです。もちろん重要な案件や複雑なケースでは、弁理士に調査委を依頼します。その調査費用は、ひとつの法律(さらにはその中で一つの主題)について、数十万円かかるのが普通です。商品によっては複数の法律や主題についての調査が必要な場合もあり、調査費用が数百万円になることもあります。こうしたコストを掛けるかどうかはともかく、いま日本で商品を販売するためには、そのような内容の調査をしなければならないのです。

知的財産権の侵害性の調査は、弊所でも行っています。ある商品を輸入・販売することが、他人の知的財産権を侵害しないか調査し、調査報告書を作成いたします。卸先の会社や店舗から、このような調査報告書の提出を求められることがあると思いますが、弁理士による知的財産権調査報告書は信頼感があり、大変ご好評をいただいています。

現在、お試しで、産業財産権四法(特許法・実用新案法・意匠法・商標法)の調査を、初回限定20万円で承っています(※平成27年9月末まで)。四法セットで20万円の価格は、業界標準の80-70%オフの大特価です。

万一販売後に侵害が発覚すると、訴訟対応で100万円単位のコストがかかります。できるだけ早い段階で調査しておくと、結果として安く済みます。重要な商品、大量生産する商品、大切な取引先に卸す商品は、是非知財調査を行うようにしてください。

「◯◯風」と知的財産権侵害

小売店の方からよくいただく質問のひとつに、他人の商標などを用いて「◯◯風」や「◯◯タイプ」として売ってよいかというものがあります。

これにはいろいろな角度から回答することができるのですが、今回は商品自体が他人の知的財産権を侵害する場合とそうでない場合に分けて考えてみます。

商品が他人の知的財産権を侵害する場合

そもそも商品自体が他人の知的財産権を侵害する場合は、商品名や商品説明をいくら「◯◯風」などとしても、もちろん侵害の事実はなくなりません。

コピー商品を売る場合

わかりやすい例では、もののけ姫のコピーDVDを「もののけ姫風アニメ」のDVDとして販売しても、当然著作権侵害ですよね。

同様に、ヴィトンの財布の偽物を「ヴィトン風の財布」として販売しても、もちろん商標権侵害などの違法行為です。

このあたりは常識で理解できると思います。

コスプレ衣装

特に質問が多いのが、アニメキャラクターなどのコスプレ衣装です。例えば綾波レイのプラグスーツのコスプレ衣装を「綾波レイ風」として売ってよいのでしょうか?

出典:blog-imgs-27.fc2.com

無許諾のコスプレ衣装の販売等が著作権を侵害するかどうかは、微妙です。そもそもマンガやアニメに出てくる衣装に著作物性があるかどうか自体に十分な議論がされていないように見受けられますし、仮にあるにしても、作品や衣装ごとに判断されるべきことは明らかです。つまり、あるアニメの衣装に著作物性があるかどうかはケースバイケースですし、その判断は(基準がない現在では)専門家でも容易にはできないのです。

ただし、そうしたコスプレ衣装の輸入販売が著作権侵害であるとして検挙された事例もありますし、場合によっては他人の著作権を侵害する可能性があることは認識しないといけません。

本題に戻りますが、仮に綾波レイの衣装(プラグスーツ)に著作物性がある場合、それを輸入販売することは著作権(複製権等)の侵害になるので、いくら販売時に「綾波レイ風」としても違法です。逆に著作物性がない場合は、「綾波レイ風」としたところで、更には「綾波レイのプラグスーツ」としたとしても、著作権侵害とはなりません。

結局、輸入や販売をする前に対象となる衣装の著作物性を確認する必要がありますが、上述のようにその判断は専門家にすら難しいことが多いです。そうすると、無許諾のコスプレ衣装の輸入販売は、著作権侵害をするかどうかわからないものを販売してしまう可能性が非常に高く、「◯◯風」とするかどうかに関わらず、リスクが大きいといわざるを得ません。

結論

結局、商品そのものが違法なら、「◯◯風」とするか否かに関わらず、常に違法ということになります。「◯◯風」としておけば偽物を売っていることにはならないので問題ないと考えている人が多いですが、これは根本的に間違っています。上記は主に著作権の観点から説明しましたが、特許権や意匠権など、他の知的財産権でも事情は同じです。

商品が他人の知的財産権を侵害しない場合

一方で、商品そのものは他人の知的財産権を侵害することはないが、それを「◯◯風」として売ることで問題になることがあります。

登録商標を利用する場合

例えばある香水を販売するときに、「シャネルNo.5風」の香水として販売することは許されるのでしょうか。

これには、パッケージに「シャネルNo.5と香りのタイプが同じです」と記載された安価な香水がシャネルの商標権を侵害するとされた事例があります。

ただしこの事件では多少特殊な事情があったので、必ずしも他人の登録商標を「◯◯風」「◯◯タイプ」などとして使うと商標権侵害となるわけではありません。本事件の解説は省略しますが、通常は商標的な使用とは認められないと思われるケースでも、商標の知名度や使用方法によっては商標権侵害となってしまう場合があることが示された点で、注目する価値があります。本事件の射程距離(先例的価値)がどれくらいあるかはわかりませんが、一般には、有名な商標は「◯◯風」などという形でも勝手に使わない方が安全ということが読み取れそうです。

著名な未登録商標を利用する場合

例えばボッテガヴェネタが座布団について商標権を持っていない場合に、編みこみタイプの座布団を「ボッテガ風座布団」として販売できるのでしょうか。

商標登録も防護標章登録も存在しない場合、商標法は問題になりません(もちろん類似範囲も考慮した結果です)。しかし、その名称が有名な場合は、不正競争防止法が問題になる場合があります。

「ボッテガ風座布団」は商品名にも商品説明にも用いることができると思われます。商品名の場合は不正競争防止法上の商品表示に該当することは明らかだと思いますが、商品説明の場合は、一般には商品表示には該当しづらいとも考えられます。しかしこの場合でも、上記シャネルNo.5タイプ事件にあるように、一定の条件を満たせば商品表示に当たると判断される可能性は十分にあります。特に商品表示が商標よりも広い(定義上だけでなく実務上も)概念であることを考えると、商標にすらなり得るのですから、当然商品表示にもなると考えるべきでしょう。

そうすると、『ボッテガ』が著名(or周知)であるという前提に立つと、「ボッテガ風座布団」は、これが商品名であっても商品説明であっても、不正競争防止法上問題になる可能性がありそうです。

商標や著作物を利用しない場合

例えば「綾波レイ」はアニメキャラクターの名前であり、一般には商標でも商品等表示でもありません。当然この名称には著作物性もないでしょう。なので、このような名称自体は、自由に使って構いません。「綾波レイ風」とするのも問題ありません。

商品自体に問題がない場合、「綾波レイ風」のように、商標でも著作物でもない名称を使用することでは、知的財産権侵害にはなりません(注:本当に「綾波レイ」の商標登録や防護標章登録がないかは都度確認する必要がある点にご注意ください)。

こうしたケースはあまり想定されないかもしれませんが、例えば普通のクロネコのキーホルダーを「クロネコジジ風」などとして販売することが考えられます。

まとめ

ノーブランド品は顧客吸引力が弱いので、顧客吸引力の強いブランドを利用ようと考えることがあります。しかし今回見てきたように、多くの場合そうした行為は禁止されています。

そもそも利用しようとするブランドは当然有名なものでしょうが(そうでなければ利用する価値がない)、有名な名称等は様々な法律で保護されています。特にネット販売の場合はいかに検索に引っ掛けるかが売り上げに直結するので、なんとか顧客吸引力のあるキーワードを入れようとすることが多いです。しかしそうした行為は違法の可能性があります。販売前に専門家に相談されることをお勧めします。

今回は概論として全体像を見たため、細かい検討ができませんでした。今後機会があれば各論を検討したいと思います。特に検討をご希望される項目があれば、お気軽にリクエストしてください。

税関に行ってきました

先日、東京税関に行ってきました。

輸入差止申立制度を利用するにあたり、税関職員の方と事前相談をするためです。

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特許権や商標権などの知的財産権が侵害されている物品(いわゆる偽物・模倣品)を輸入することは、密輸にあたります。税関では密輸を阻止すべく日々努力していますが、すべての貨物を開封して検査することは到底不可能ですし、仮に全品検査するにしても、毎年何十万件も発生しては消えていく様々な知的財産権の内容をすべて把握して知的財産権を侵害するかどうか判断することも当然不可能です。

そこで予め権利内容と侵害品や侵害者の情報を税関に提供し、効率よく差し止めてもらうことができます。この制度を、輸入差止申立制度といいます。

輸入差止申立制度を利用するには、税関に対して輸入差止申立書を提出します。そして税関では、申立書の作成段階で、申告内容について事前に相談に乗ってくれます。権利内容本物・偽物の識別ポイント具体的な侵害状況想定される輸入ルートなどを、税関の知的財産調査官に直接説明し、差し止めしやすい申告書の作成方法について対面で相談することができます。

今回私が伺った際には本件のご担当調査官及び調査部長を含め、計5人もの調査官が参席してくださいました。いかに税関が知的財産権侵害物品の差し止めに力を入れているかが伺えます。

逆にいうと、どのような内容を税関に提供するかによって、水際差止の効率が大きく変わってきます。実際、空輸であれコンテナ輸送であれ、貨物の開封検査は例外中の例外です。日本の輸入許可は輸入申告書の記載に基いて行われ、貨物の検査を経ることは通常はありません。例外的に検査必要と認められた貨物のみが検査されるのですが、どの貨物を検査するかはすべてコンピュータが決めています。

このコンピュータの内容はほとんどが非公開なのですが、かなり高性能なものだと言われています。様々な情報から複合的に判断し、貨物ごとに「検査なし」「書類審査」「開封検査」のいずれかに振り分けるそうです。例えば輸入者が過去に密輸の前科がある場合や、コンテナですと混載種類が多い場合、そして当然輸入差止申立書に記載されている輸入者は、検査の確率が高くなります。

税関への輸入差止申立をするということは、いかにしてこうした検査に引っかからせるかという作業に他なりません。輸入差止申立書に権利内容のみを記載して提出しても、ほとんど実効性はありません。特に空輸で複数の輸入者がパラパラ入れてくる場合は、どれだけ侵害情報を提供できるかで、輸入差止の実効性に大きく影響します。

そのときに、輸入者の情報を提供するのはもちろん有効ですが、それに加えて輸出者の情報を提供したほうが有効的な場合が多いです。偽物の流通は下流に行くほど枝分かれしてしまい、対応に手間とコストが掛かるようになるので、「偽物は上流で叩く」のが基本です。そうすると、例えば偽物がアマゾンで販売されているときに、各出品者に対して手続きするよりもプラットフォームであるアマゾンに対して手続きする方が効率がいい場合が多いですし、アマゾンに対してよりも輸入される段階で止めたほうが効率がいいです。そして更に輸出者レベルでまとめて止めたほうが効率がいいですし、その上流では輸出者の仕入先である小売店や卸売店、更には工場で型を潰してしまうのが最も効率がいいということになります。

しかし一般には上流に行くほど手間とコストが掛かるので、それぞれの段階をうまく組み合わせて全体として効率よく偽物の輸入・販売を差し止める必要があります。こうした対策は、模倣品対策の全体像を十分に把握している専門家のアドバイスに従ったほうが、トータルで安く済みます。

輸出者の情報提供をする意義
近年増えているインターネットでの偽物販売に関しては、中国内で様々な流通経路・流通段階にある商品を、代行業者が購入し、商品を取りまとめてから各輸入者宛に輸出する態様が一般的です。つまり偽物は一度代行業者に集まるので、代行業者レベルで押さえられれば効率よく偽物対策ができます。
ネット販売における偽物流通経路の模式図(クリックで拡大)

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しかし、日本の特許法や商標法などでは、中国における輸出者の違法性は問えません。日本の法律は日本国内のみで有効なので、中国での違法行為は日本では違法性を問えないのです。
ご存知のように中国での輸出通関はザルですから(※中国では事前に税関に登録した権利でないと偽物であっても輸出段階で止まりません)、輸出業者は堂々と偽物を日本に輸出して商売をしています。
このように中国での輸出代行業者の違法行為は止められないため、税関に輸出者の情報を提供できるということは、こうした輸出業者の貨物を水際で止められ得る数少ない、貴重な機会を得ることを意味します。特に小口輸入者の商品を取りまとめて輸出している代行業者の存在が日本での模倣品蔓延の元凶になっているため、こうした業者の違法行為に対応できる可能性がある点でも、税関での輸入差止は大きな意義があるといえます。
端的にいうと、輸出代行業者は、「偽物は下流に行くほど枝分かれする」という原則の数少ない例外なので、ここを叩くのが手間やコストの観点から効率がいいのです。おそらく最近のインターネット販売における偽物を最も効率よく減らす方法は、こうした輸出代行業者の貨物を税関で止めることだと思われます。もちろん輸入者ごとに止めるのが王道ではありますが、そのひとつ上の段階である輸出代行業者単位で貨物を止めるという視点は、今後の偽物対策の鍵になっていくでしょう。