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アマゾンブランド登録と商標登録の話題 Part2

アマゾンブランド登録が刷新されて、商標登録が要求されるようになったことは以前お話しました

その後多少ルール変更があったので、特にお問い合わせが多い点も含めて、まとめ直します。

新ブランド登録とは何か

ブランド登録プログラム自体は、これまでもアマゾンにありました。ブランド登録をすることで、商品ページの編集権限が強くなったり、模倣品の排除に協力してもらいやすかったりというメリットがありました。それらをさらに強化して、新たな機能まで加えたのが、新ブランド登録プログラムです。米国では、旧バージョンを「アマゾンブランド登録1.0」、新バージョンを「アマゾンブランド登録2.0」と呼ぶことがあるようです。

ブランド登録2.0では、1.0の特徴を引き継ぐか、それらを改良した上で、さらに機能が加わりました。

特に知的財産権の保護という観点からは、ブランド登録2.0を利用することで、模倣品を排除しやすくなりました。具体的には、ブランドオーナー用の管理画面にて、商品ページや出品者を管理することができるようになりました。また、知的財産権侵害の申し立ても、管理画面からできるようになりました(従前の申告ページを利用しなくてもよくなりました)。これによって、これまで商標権・意匠権侵害に限ってオンラインで申し立てができたものが、著作権などにも対象が拡大されました。さらに、申し立てが優先的に処理され、違法出品の削除が迅速になされるようになりました。

他には、ブランド登録2.0では、そのブランドの一覧カタログのようなページが作成できる機能が実装されました。米国ではその一覧ページのデザインをある程度自由に変更でき、いくつかテンプレートも用意されています。※その一覧の各商品ページには誰でも出品できる点に留意してください。出品自体を独占できるわけではありません。

その他、新商品に優先的にレビューが投稿されるような機能(レビュアーにアマゾンから報酬が支払われる)や、特別な広告(ヘッドライン検索広告)が購入できたりという利点もあります。これらの機能は順次日本にも導入されると思われます。

ブランドオーナーの方は、ぜひともブランド登録2.0を利用すべきでしょう。費用はかかりません。

なお、ブランド登録1.0の登録は、自動的に2.0にはアップグレードされません。2.0は新規に登録し直す必要があります。当面は両者が併存するものと思われます。

ルール変更点

当初、「標準文字商標」での商標登録が要求されていましたが、これが「文字商標」に緩和されました。

標準文字のみ
 ↓
標準文字あるいは文字商標
 ↓
文字商標

という変遷をたどり、いまでは「文字商標」であればよいことになっています。といっても、標準文字商標は文字商標に含まれることから、二番目と三番目は実質的に同じ内容だといえます。

国によっては標準文字制度がない(例:中国)こともあり、そのような国ではもともと文字商標での登録で足りていたことから、日本の基準をそこまで広げた(緩和した)ということでしょう。

ここで、アマゾンがいう「文字商標」に、どこまで含まれるのかが問題になります。例えば少しでも文字に装飾がなされていたらダメなのか、あるいは特殊な書体で表された文字の商標はどうなのかという部分は、まだよくわかりません。特に、文字商標だけれどもその一部にのみ装飾が付されている場合などは、より微妙です。

要は商標制度を利用してブランドのオリジナル性を確認するのが目的でしょうから、重複して登録され得る商標ならば、登録されていてもブランド登録の根拠とはならないでしょう。そういう意味では、装飾された文字や、特殊な書体の文字の登録では、ブランド登録が認められない可能性があります。

実際の運用としては、アマゾンがある程度踏み込んで判断するのかもしれませんし、図形が含まれないならばすべてブランド登録して、重複が生じた際に個別に対応するのかもしれません。このあたりはしばらく様子をみる必要があります。

文字商標の登録が要求される理由

ブランド登録1.0では言及がなかった商標登録が、2.0で要求されるようになったのはなぜでしょうか。

まず端的に、ブランドオーナーであることの確認をするために商標登録を利用していると考えられます。
ブランド名を商標登録しているのは正規のブランドオーナーでしょうから、商標登録のデータを利用してブランドオーナーであることを確認しているものと思われます。
逆にいうと、例えば他人がブランドを勝手に商標登録してしまったような場合でも、誰がブランドオーナーであるかは、アマゾンに対してではなく商標登録の有無で(特許庁や裁判所で)争えと言うのだと思います。アマゾンとしては商標登録名義人をブランドオーナーとして認識するという意思表示なのでしょう。

そして、文字商標に限定しているのは、アマゾン内でブランドの重複を避けるためだと思われます。書体やデザインに特徴のない文字列ならば、同じ商標が異なる人に重複して登録されることはありません。重複がしないことの審査を、商標制度を利用して行っていると推測されます。

指定商品をどうするか

ブランド登録を目的としてこれから商標出願する場合、指定商品をどうするかが問題になります。

普通であれば、実際に販売する(or販売予定がある)商品をすべて指定すべきでしょう。しかしブランド登録のみを目的とする場合は、もう少し節約できる可能性があります。というのは、ブランド登録はアマゾンの定めるカテゴリ単位でなされ、これは経済産業省の定める指定商品の範囲とギャップがあることがあるからです。

例えば、アマゾンでは、「服・シューズ・バッグ・腕時計」というカテゴリがあります。これを商標の区分に対応させると、

第14類:腕時計
第18類:バッグ
第25類:服・シューズ

となります。

アマゾンではそのカテゴリに含まれる商品をひとつでも販売&商標登録しておけば、そのカテゴリ全体についてブランド登録できることから、例えばあるセーター(服)のみを販売&商標登録すれば、「服・シューズ・バッグ・腕時計」というカテゴリ全体についてブランド登録をすることができると思われます。

そうすると、例えば「アパレル・バッグ・ウォッチ」という商品群を扱う場合でも、3区分すべてを指定せずとも、どれか1区分のみを指定すればよいことになり、出願費用を節約することができます(例:第25類「被服」のみを指定)。

同様の例は他のカテゴリでもあり、例えば「スポーツ&アウトドア」「ベビー・おもちゃ・ホビー」「パソコン・オフィス用品」「ホーム&キッチン・ペット・DIY」「家電・カメラ・AV機器(※照明器具が含まれるカテゴリです)」なども、複数の区分にまたがります。

なお、このように商標登録よりも広い範囲でブランド登録をしてしまうと、アマゾン内でブランドの重複が生じ得ますが、それをアマゾンがどう処理するかは不明です。これも個別の対応となるのかもしれません。
※ この観点からは、やはり取り扱いのある商品すべてを指定しておくのが安全です。例えば第25類「被服」のみを指定して商標登録をして、「服・シューズ・バッグ・腕時計」というカテゴリでブランド登録を受けたとしても、他人が第14類「腕時計」について同じ商標を登録した場合に、自分のブランド登録の範囲が事後的に狭められる可能性があります。

外国での商標登録もOK

商標登録は必ずしも日本でされている必要はなく、現在は、米国、カナダ、メキシコ、インド、日本、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、イギリス、欧州連合のいずれかで登録されていればOKとされています。つまり、例えば米国のみで商標登録されている場合、日本で登録をし直さなくても、米国の商標登録を根拠に、日本のアマゾンでブランド登録できます。

これは、外国ブランドの商品が日本に輸入される場合を想定しているからだと思います。例えばアメリカのブランドが日本に輸入されるときに、アメリカでのみ商標登録されているケースは少なからずあります。その際に日本での商標登録までは要求しないということでしょう。

ここでもブランドの重複が問題になりえます(例えば日本と米国で同じ商標が異なる権利者に登録されている場合がある)が、これも個別対応なのかもしれません。

ブランド登録のリスク

ブランド登録プログラムの利用規約を見ると、以下のような規定があります。
※ この規約はブランド登録プログラムが提供される国すべてで共通です。参考日本語訳はこちら

4. Content and Materials
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要は、そのブランドの商標などを、アマゾンはアマゾン内で自由に使えますよという内容です。サイト内で商標を表示する場面も出てくるでしょうから、このような規定があること自体は当然なのですが、ブランド登録プログラムを通じて提供した商標などを、アマゾンが

on and in connection with Amazon websites and related products and services
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できる権原を与える、とかなり広めな用途が想定されていて、権利者が予期しない使用方法まで許諾してしまう可能性があります。

もっとも、後段にあるとおり、使用方法にはそれなりの制限が付されているので、現実に問題が生じる可能性は高くないかもしれませんが、担当者にとっては、社内のコンプライアンスをクリアできるかが重要になりそうです。

おまけ1:小売等役務(第35類)を指定できる?

これはくだらない話なのであまり触れたくありませんが、相変わらず問い合わせが多いので少し検討します。

先程の例でいうと、「服・シューズ・バッグ・腕時計」を、「被服,履物類(第25類)」「かばん類(第18類)」「腕時計(第14類)」と3区分を指定すると費用がかさむので、それぞれを対象とする小売等役務(第35類)を指定して、1区分の費用で済ませられないかと考える人がいます。その場合にブランド登録できるのかが問題になりますが、結論としては、できるようです(登録できた例があります)。

たしかに、日本では小売等役務とその小売等の対象商品の重複をクロスサーチするので、小売等役務について商標登録されていれば、他人に個別の商品について商標登録されることはありません。従って、小売等役務(第35類) を指定した商標登録に基いてブランド登録をしても、問題はないのかもしれません。ただし、これがクロスサーチをしない国ではどうなのかは、いまはまだわかりません。

おまけ2:相乗り排除との関係

これも中国輸入向けのくだらない話ですが、相乗り排除のために商標登録をするケースがあります。その上でブランド登録もしたいという相談があるのですが、そもそも目的がまったく異なるので、商標登録の内容も当然異なります。

相乗り排除をするには、実際に商品に付す商標を登録するのが最も有効です。その商品の販売に対して商標権侵害を主張するわけですから、当然です。商品には通常ロゴや飾り文字を入れるでしょうから、それを図形として登録すべきです。

一方で、上述のとおり、ブランド登録には文字商標の登録が要求されます。「文字商標」の定義が曖昧な以上、可能なかぎり標準文字商標を登録すべきといえます。

結局、それぞれの目的に合わせて登録する商標の内容を選択する必要があります。

と書くと、要は二件出願させて手数料稼ぎたいんだろうなどと言われるので中国輸入は面倒くさいのですが(笑)、もし予算の関係でどちらか1件しか出せないならば、「相乗り排除なんかやめなさい」と言いたいです。アマゾンにとっては紛れもなく迷惑行為ですし、まともな人がやることではありません。

もしそれでも両方やりつつ商標出願は1件で済ませたいというのであれば、標準文字で出すしかないでしょう。ロゴや飾り文字で出してしまうと、明らかにブランド登録の要件を満たしません。一方で相乗り排除(違法出品の削除)については、アマゾンは申告があれば右から左に全部削除してくれるので、標準文字でも別に構いません。ただしそうした排除は法的に根拠がないケースも出てくるでしょうから、商標の類否判断ができない人が費用だけ見て適当に標準文字を登録して他人を排除すると、訴訟等になった際に不利になるリスクがあることは知っておくべきでしょう。

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