Tag: 義烏

『パテント』に記事掲載されました

日本弁理士会が発行する月刊誌、『パテント』の今月号(9月号)の特集が「模倣品対策」でして、私も義烏絡みの記事をひとつ寄稿しました(偉そうに言っていますが、パテントを作る委員会に知り合いの弁理士がいて、中国絡みで書くよう頼まれただけです)。

16091501

そもそも弁理士以外の方は『パテント』をご存知でないと思いますが、ざっくりいうと弁理士会の会報誌のような位置付けの雑誌です(こんな表現をすると怒られるかも)。弁理士には毎月全員に強制的に送られてきますが、それ以外は、官公庁や裁判所、警察、税関などの知財関連の機関の方を除いては、あまり目にする機会がないかもしれません。基本的には弁理士が論文のようなものを投稿して、審査に通ると掲載されるようになっています。

私の記事は論文ではなく(まぁ形式的には論文なのかもしれませんが)、単に義烏と福田市場、さらに、義烏を介して行われる中国輸入というモデルについて、模倣品の観点から紹介するというものです。

16091502

記事内容は、卸売に特化した義烏という街をざっくりと紹介し、そのトレードマークでもある福田市場について説明をした上で、福田市場やタオバオ、アリババなどから小口で模倣品を輸入し日本のネットで販売する「中国輸入」にも軽く触れ、それに対する効率的な対応策を提案するものです。

紙面の制限があり表面的な話しかできませんでしたが、おそらく法律専門家の観点から義烏を紹介する記事は史上初ではないかと思われ、また特に、「中国輸入」というわけのわからない偽物販売ビジネスについて広く世に紹介することができたことは有意義であったと考えています。

これまで規模が小さすぎて対応コストがペイしないため、中国輸入という偽物販売ビジネスは無視されてきたという現実がありましたが、比較的コストをかけずに効果的な対応ができるのであれば、権利者さんたちも動けるかもしれません。

そしてそうした小規模の偽物を大量に発信しているのが義烏だという事実を知っていただければ、より効果的な対応ができるようになる可能性があります。

本当は福田市場にある偽物商品の写真を大量に掲載して、偽物を売っているブースに突撃取材して・・・などをやりたかったのですが、『パテント』に載せる以上そういうわけにはいかず、一般論を紹介するに留めました。

また中国輸入についても、基本的には日本のアマゾンで売られるとか、最近はメルカリがやばいとか書きたかったのですが、具体的な名称を出すわけにはいかず、こちらも一般論として説明するだけになっています。

これらについてより具体的な内容をお知りになりたい方は、無料でセミナーをやっていますので、お気軽にお申し付けください。

なお、この記事は2ヶ月後にPDFで公開されますので、『パテント』を入手できない方は、そちらにお目通しいただければ幸いです。

※ ところでタイトルの 「ニセモノのふるさと」義烏と「中国輸入」 という表現は、カギ括弧の位置がイマイチよくわからないものになっていますが、まぁいろいろあったのです。本当はカギ括弧のないタイトルで提出したのですが、いろいろ問題がありそうということで、いろいろ検討した上でこの形に落ち着きました。お察しください。

この記事に対するご意見・ご感想は、弊所facebookページよりお願いいたします。
当ページヘのいいね!もお待ちしております。

義烏にきています160904

昨日から中国・義烏にきています。

義烏の福田市場は世界最大の卸売市場で、弁理士の目で見ると、とにかくニセモノだらけでどうしようもないところです。

今日午後に時間ができたので、小一時間市場を覗いてきました。市場で見つけた商品を紹介します。

k16090301
ポケモン、ゲットだぜ!中国人は本当に仕事が速いです。これ、市場で大流行中。あちこちの店舗で置いてました。ちなみにモバイルバッテリです。

さきほど夜市でこれを見かけたので値段をきいたら、10,000mAhのもので、150元(約2500円)だそうです。買わないので値切らなかったんですが(※たいていふっかけられるので、値切って適正価格まで落とす手間が必要です)、おそらく本来は100元(約1700円)程度で売っているのではないでしょうか。

まさかと思い探してみたら・・・日本でもネットで売られていました。

日本人も負けじと仕事が速いですね。

※ この商品が任天堂さんあるいは他社さんの何らかの権利を侵害するとか、違法性を有しているかなどは、わかりません(調べてもいません)。

ほかにも・・・
k16090309

k16090310

k16090311

k16090321

k16090322

どこかで見たことがあるキャラクターばかりですが、すべてモバイルバッテリです。ライセンス商品である確率は限りなくゼロに近いと考えてOKです。

まだまだ、

k16090314

k16090315

iRingと書いてありますが、おそらくニセモノでしょう。それにしてもポケモンは大人気ですね。

k16090316

相変わらずスマホケースはニセモノの宝庫です。

ほかには例えば、

k16090317

k16090318

k16090319

ゲーム機には詳しくないのですが、おそらく勝手に商標を使用しているニセモノです(商標権の存在については未確認ですが、仮に存在しなくても、日本に輸入されたら不正競争防止法で処理できると思われます)。

k16090320

このように、 “FOR PS II (PS2用)” という書き方なら、商標的な使用からは外れてくる可能性が出てくると思われますが。

次はかばんコーナー。

k16090324

k16090327

k16090331

いつの時代もディズニーは大人気。

k16090313

k16090323

k16090326

k16090332

普遍の高級ブランド。ニセモノとの戦いは永遠に終わらない。

k16090333

k16090334

これらは市場内の看板。そうです、福田市場には正規代理店も入っているんです。

k16090336

k16090337

k16090340

k16090338

k16090341

これらはすべて正規代理店による、正規商品です。

ただし、彼らの代理権の範囲は、ほぼ確実に、中国内での流通のみです。すなわち彼らは、ディズニー商品を、中国内で流通させる業者にしか売ることができません。もし中国外で販売する業者に卸すと、ライセンス違反となります。

実はここに問題があります。これら正規代理店から商品を仕入れ、日本に輸入する輩が後を絶たないのです。中国人を遣わせて中国内で販売すると嘘をついて商品を仕入れ、日本への輸入時には並行輸入をうたうわけです。こうした輸入への対応は、技術的・法的・金銭的に難しいという問題があります。福田市場の正規代理店は日本人に騙された立場にありますが、ライセンス違反の責任を負う場合があり、一部の日本人の行為が中国人に迷惑をかけています。

ほんの小一時間市場を歩いただけで、これだけのニセモノが見つかりました。いや、本当はもっともっとあったのですが、撮影できたのは店先に並んでいたものだけです。最近はこうしたわかりやすいニセモノは店先には置かず、奥の方だが目立つ位置に陳列するケースが増えているようです。見えづらい場所にあるものも含めたら、市場全体でどれだけのニセモノがあるのか、もはや見当もつきません。

しかしながら最近は、こうしたわかりやすいニセモノはあまり日本に入ってこず、他の外国(東南アジアや中等など)に輸出されることが多いようです。権利者は対応コストに苦慮していることでしょう。

一方で日本人は、ブランド商品など人気の高いものをサンプルとして福田市場に持ち込み、それのコピーを作らせます。わざわざニセモノを作りに中国まで来るのですから、呆れてしまいます。特に最近は、そうして作ったコピー商品の商標を自社のブランドに変更して、「オリジナル商品」を名乗って販売する事例が増えています。日本における模倣品は、ブランド模倣からデザイン模倣にシフトしています。設計図も仕様書も書かず(描かず)に「オリジナル商品」をうたう図々しさには呆れるばかりですが、そもそもそうした商品はニセモノ、模倣品でしかないという根本的な部分を理解してほしいものです。

この記事に対するご意見・ご感想は、弊所facebookページよりお願いいたします。
当ページヘのいいね!もお待ちしております。

義烏(イーウー)の偽物事情 – 日経新聞より –

少し古い記事ですが、5月31日、義烏が日経新聞アジア版で紹介されました。

ざっくり内容を紹介すると、義烏とスペインのマドリッドを陸路(列車)で繋ぐ路線が昨年開通して、義烏の商品をヨーロッパに安く運ぶルートが確立した、これは現代版シルクロードと呼べるものであり、義烏はその始点として重要な役割を担うというものです。

同時に記事では、義烏の偽物事情についても言及しています。実は義烏から出荷する商品は、義烏で通関ができます。義烏は内陸で海や川には面していませんが、義烏港という税関(海关)があり、ここで通関した貨物はそれ以降は外国貨物として扱われます。

税関である以上偽物の輸出を止めなければならないのですが、記事によると、検査をするのは全量の5%に過ぎず、外向けのパフォーマンスでしかないとされています。実は5%の検査率というのは中国の輸出通関の平均的な開封検査率(1%以下)と比べると非常に高いのですが、いかんせん義烏には中国全土から偽物が集まってくるので、そもそも貨物が偽物である確率が異常に高く、この程度では有効に偽物を抑えられません。義烏が中国有数の偽物の発信地であり、マドリッドがヨーロッパ最大の偽物のハブとなっていることを考えると、義烏にはより強力な通関システムが求められているといえます。

もちろんこれはヨーロッパだけの問題ではありません。中国の模倣品の被害を最も受けているのは、日本です。

15060701
2014年度模倣被害調査報告書(特許庁)より引用

上図によれば、中国産の模倣品の被害を最も被っているのは中国自身であり、その次は日本です。つまり中国の模倣品により最も損害を受けている外国は日本なのです。

このような偽物の多くは広東省(広州・東莞・深圳など)や浙江省(杭州・温州・義烏など)を中心とする中国全土の工場で製造され、そのまま輸出されるか、一度義烏に集められ、世界各国のバイヤーを介して世界中にばら撒かれます。例えば下記図で明らかなように、

中国の主な偽物製造都市
15060702

2014年度模倣被害調査報告書(特許庁)より引用

偽物の製造地では広東省と浙江省が突出しており、また、

中国の主な偽物経由都市
15060703
2014年度模倣被害調査報告書(特許庁)より引用

製造された偽物は、広州や義烏から直接輸出されるのに加え、上海・香港・杭州などの主要港を経由して世界中にばら撒かれていることがわかります。

このように、義烏発の偽物は世界中で問題になっています。中国では国策として偽物を減らすよう努力していますが、大規模工場ではともかく、義烏のように小規模工場や卸売業者が集まる街ではそんな意識は誰一人持ち合わせていません。中国に住んでいる実感としては、この国から偽物がなくなることは永遠にないような気すらします。それくらい偽物や違法商品に対する抵抗感が、国民一人ひとりにわたってありません。義烏発の偽物は、中小企業や個人にとってももはや他人ごとではないのです。